彼は今日も車椅子から部屋の窓越しに

雲がまだ少し残る梅雨明けしたばかりの空をぼんやりと眺めていた。

「外に出て、歩いてみたいな。」

彼はやや力なく呟いた。

梅雨は明けたばかり、雨の気配もなく、午前の陽は夏を演出しはじめている。

私はすぐに歩行器を準備し、彼と屋外へと向かった。

連日の雨を吸い込んだアスファルトは、熱せられ湿気を帯びたわずかな上昇気流で私たちを迎えた。

途端に彼は車椅子から立ち上がり、歩行器を握りしめ、そこへ自ら歩を進めた。

それは止まることなく一歩、また一歩と不安定ながらも着実に前進をみせた。

しばらくして、彼はゆっくりと立ち止まり、数分前とあまり変わらない空をまっすぐに見つめた。

「いやぁ、うれしいな。外を歩けるなんて。」

瞳は輝き、彼の声は梅雨明け直後の夏空にやわらかく、だが力強く響いた。

日々の努力が実を結ぶとき、きっと私たちも彼と同じ気持ちを味わうことができるのだろう。

無限の空にたかく積乱雲をのぞめば

遠雷もなつかしく夏がおとずれる

夏のどこかへ・・・

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※屋外歩行訓練１（入居者様）

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